2009年01月30日 (11:09)
ドキシル:卵巣がん新薬承認へ 80カ国すでに販売--厚労省
ドキシルは米国の製薬会社が開発し、日本の製造販売元はヤンセンファーマ(東京)。07年1月にエイズ関連疾患の治療薬として国内承認され、同月から卵巣がんへの適用拡大を申請していた。
卵巣がんの治療薬は二つのタイプの抗がん剤が承認されているが、アレルギーで使えない患者が1割以上いるとみられ、耐性ができて効かない場合もある。日本婦人科腫瘍(しゅよう)学会の治療ガイドラインはドキシルを再発ケースに有効な化学療法として挙げており、厚労省は優先的に承認手続きを進める「迅速審査」の対象にしていた。
厚労省審査管理課によると、部会では臨床試験のデータが少ないため、全患者の追跡調査をすることを条件に承認を認めたという。
日本では新薬が世界で最初に発売されてから国内で販売されるまでの期間が平均4年で米国より1年半長い。国は体制強化のため、来年度の承認審査と市販後の安全対策にかかわる人員を、それぞれ約100人ずつ増やす予定。【清水健二】
◇「治療の希望もらえた」--4年間闘病、55歳に朗報
「もう一回、チャンスをもらえた」。4年前に卵巣がんが見つかり、抗がん剤治療を繰り返してきた東京都江東区の〓原(にいばら)美智子さん(55)は、医師から「もう打つ手がない」と告げられないかと、ずっとおびえてきた。治療の選択肢が狭まる中、ドキシルは残された希望だった。
年間約8000人がかかる卵巣がんの患者に、ドキシルが知られるようになったのは06年ごろ。保険の利かない自由診療で使う患者もいたが、1回で数十万円の重い自己負担がのしかかる。「世界では当たり前の治療を、私たちも受ける機会がほしい」と、患者団体「卵巣がん体験者の会スマイリー」が中心となって集めた早期承認の署名は、18万人分を超えた。
抗がん剤は副作用の危険も高く、市販後に死亡例が多発した肺がん薬「イレッサ」の例もある。代表の片木美穂さん(35)=三鷹市=は薬害被害者団体とも連絡を取り合い、仲間に「審査はきちんとしてもらわないと」と言い続けた。
今後は、体調の変化などを速やかに国や製薬会社に届けられる相談体制を作りたいという。
〓原さんは闘病中も、趣味のテニスや旅行を楽しむなど、明るさを失わないよう心掛けてきた。昨年3月に一人息子が結婚し、孫の顔も見たい。「治るとは限らないけれど、希望があるから前向きに頑張れる」と声を弾ませた。
毎日新聞 2009年1月30日 東京朝刊