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2014年08月01日 (11:55)

重篤な有害事象の全症例を登録するシステムを稼働、化学療法の質の向上につなげる取り組み【臨床腫瘍学会2014】

 癌化学療法の進歩に伴い、外来化学療法件数が増加し、多彩な有害事象も増加している。千葉県がんセンターでは、癌化学療法後の重篤な有害事象(SAE)全症例を機械的に登録するシステムを稼働した。このシステムにより、高頻度の事象だけでなく、埋もれてしまうかもしれない重要な問題を抽出することが可能となり、要因を解析することでより安全で適正な化学療法のシステムの構築につながる可能性が示された。7月17日から19日まで福岡市で開催された第12回日本臨床腫瘍学会学術集会で、千葉県がんセンター乳腺外科の味八木寿子氏が発表した。

 同センターで2013年に行われた化学療法は、外来化学療法室、入院化学療法、内服抗癌剤処方を合わせると2万9100件に上る。

 安全かつ適正に化学療法を実施するためには体制整備が必要である。SAEに対しては、治験に限らず実臨床においても組織的な対応が必要であるが、主治医による自主申告制では実際の把握は困難となっている。SAEの基準が曖昧になることが一因と考えられ、癌腫や治療目的の多様性に加え、担当医のSAEに対する認識の違いが大きく影響している。

 そのため味八木氏らは、SAEが確実に登録されるシステムを構築し、そのデータをもとに、化学療法を安全に実施するための支持療法やシステムを整備することとした。

「抗癌剤の最終投与から1カ月以内の予定外入院」をすべてSAEと定義し、電子カルテ内に専用データベースを作成した。医療情報管理室で緊急入院を毎日リストアップし、医師事務作業補助者が該当症例の電子カルテに入力用ファイルを作成した。主治医は必要事項である最終投与日を含む抗癌剤の情報、SAEの内容、化学療法との因果関係などを入力した。最終的に、多職種からなるSAE委員会で毎週データ収集と検討を行っている。

 2012年11月から2013年11月までにSAE 800件が登録され、全化学療法件数の約2.7%だった。診療科別では、消化器が415件と最も多かった。投与経路は、注射薬60%、経口25%、注射+経口15%となり、経口抗癌剤が全体の約40%を占めた。

 化学療法との因果関係(主治医の判断による)では、「あり」と「おそらくあり」が全体の約30%を占めた。「なし」は45%と最も多かったが、これはSAEの内訳で原病の悪化が250件を超えて最も多かったためだった。悪心・嘔吐、発熱性好中球減少症(FN)以外の発熱、感染、FN、下痢、肺障害などが続いた。

 高頻度だったSAEのうち、FNは64件(8%)に発現し、化学療法との因果関係が「あり・おそらくあり」の割合は89%だった。レジメンや癌腫は不特定多数だった。軽快退院は59件(92%)となった。FN以外の発熱と感染はそれぞれ115件(14%)と87件(11%)に発現したが、「あり・おそらくあり」の割合は20-23%にとどまり、原因として胆管炎・胆道系ステントトラブルが89件を占めた。迅速な介入や適切な保存的治療が行われ、軽快退院が80件(90%)に上った。FNに対し、現時点ではレジメンや支持療法を変えるといった介入は難しいことが示されたが、FN以外の発熱に対する介入の結果からは医療の質が示された。

 悪心・嘔吐は157件(20%)に発現した。化学療法との因果関係が「あり・おそらくあり」の割合は43%だった。また肺障害、特殊な肺炎が45件(6%)に発現し、このうち間質性肺炎(薬剤性を含む)は13例、ニューモシスシス肺炎(疑い含む)は6例、アスペルギルス肺炎は1例だった。この結果から、同院では予防投薬の推奨や真菌感染症勉強会の開催などを行っている。

 SAEが発生した患者の転帰として、軽快退院は72%、死亡退院は18%となった。味八木氏は「死亡退院の結果は重く受け止めなくてはならない」と述べた。

 これらの結果を受けた取り組みの一つが、経口抗癌剤の組織的な管理で、「統一フォーマットでのカルテ記載」の義務化、カルテ記載と処方内容を照合する「薬剤監査」の徹底である。その結果、疑義照会は運用開始前(2013年4-8月)の4.4件/月から、運用開始後(2013年9-12月)は26.0件/月に増加し、また処方修正も2.8件/月から8.8件/月に増加した。

 別の取り組みは、HBV再活性化対策である。DNAモニタリングや抗ウイルス薬の予防投薬などが行われなかったHBVキャリアによる肝炎発症を1例で認めたことから、電子カルテ内に検査オーダーをセット登録し、抗体陽性時はメールで連絡し、さらに抗ウイルス薬の処方もセット登録した。これらの対策は院内でのHBVに対する意識を高めることにつながった。

 味八木氏は「SAE全症例を機械的に登録するシステムにより、高頻度の事象だけではない重要な問題を抽出することが可能になった。これらを解析していくことは、より安全で適正な化学療法のシステムの構築につながると考える」と話した。
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