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2014年09月06日 (10:37)

癌患者の在宅復帰に直接関与する因子は「退院時のBarthel Indexスコア」と「独歩率」【癌治療学会2014】

 癌患者リハビリテーションにおける在宅復帰要素の検討から、在宅復帰に直接関与する因子として、代表的なADL評価法であるBarthel Index(BI)の退院時のスコア、独歩・杖歩行率(独歩率)が示唆された。これらの改善はリハビリテーションにおいても最重要課題であるとともに、ADL低下例では介護保険など地域連携も並行して検討する必要があると考えられた。8月28日から30日まで横浜市で開催されている第52回日本癌治療学会学術集会で、徳島大学病院リハビリテーション部の近藤心氏が発表した。

 癌患者では、国の施策による在宅医療の推進、予後不良であることも少なくない疾患特性、化学療法など入退院を繰り返す治療などにより、原疾患の治療後に在宅復帰が望まれる場合が多い。しかし、治療による侵襲や体力の低下などにより、ADLが低下した状態で退院を迎える患者も多く、在宅復帰に向けてリハビリテーションが果たす役割は大きい。

 近藤氏らは、リハビリテーションが実施された癌患者について、在宅復帰の際に必要となる因子を、ADL面および環境面を中心に検討した。

 対象は、2010年10月から2013年9月までに同院でリハビリテーションを紹介された癌患者398人中、死亡退院となった46人を除く計352人。在宅復帰群225人、転院群127人に分類した。

 臓器別に癌腫をみると、在宅復帰群では造血器腫瘍21%、消化器腫瘍14%、呼吸器腫瘍12%、骨軟部腫瘍12%の順に多かった。造血器腫瘍の割合が高かった理由として、他の癌腫と比べて脳や骨などへの転移・浸潤が比較的少なく、ADLの顕著な低下をきたす症例が少ないためと考えられた。一方、転院群では消化器腫瘍31%、脳腫瘍15%、呼吸器腫瘍13%、造血器腫瘍10%の順だった。転院群では、症例数に対し脳腫瘍の比率が高く、意識障害や麻痺などにより高度のADL障害を呈する症例が多かった。

 在宅復帰に関する因子として、年齢、性別、リハビリテーション紹介までの日数、リハビリテーション実施日数、多臓器転移の有無、退院時のBIスコア、摂食嚥下障害の保有率、独歩および杖歩行率(vs 歩行器・車椅子・移動不可)、家族との同居率、介護保険の保有率の10項目について、統計解析を行った。単変量解析としてMann-WhitnyのU検定、カイ二乗検定を行い、多変量解析では在宅復帰を目的変数としたロジスティック回帰分析を行った。

 その結果、各項目の中央値またはパーセンテージは、在宅復帰群と転院群でそれぞれ、年齢は67歳と72歳、性別の女性比率は41.3%と50.4%、リハビリテーション紹介までの日数は10日と14日、リハビリテーション実施日数は27日と28日、多臓器転移の保有率は24.0%と31.5%、退院時BIスコアは95と50、摂食嚥下障害の保有率は12.9%と26.8%、独歩・杖歩行率は73.3%と30.7%、家族との同居率は71.1%と65.4%、介護保険の保有率は24.0%と12.6%だった。

 単変量解析では、年齢(p=0.002)、退院時BIスコア(p=0.001)、摂食嚥下障害(p=0.001)、独歩・杖歩行率(p=0.001)、介護保険保有率(p=0.012)で有意差を認めた。

 多変量解析では、年齢(p=0.026、オッズ比0.972)、退院時BIスコア(p=0.000、オッズ比3.493)、独歩・杖歩行率(p=0.000、オッズ比11.008)、介護保険保有率(p=0.000、オッズ比8.680)で有意差を認めた。移動の項目についてのサブグループ解析では、独歩・杖歩行・歩行器と車椅子・移動不可の2群に分類した場合、多変量解析では有意差を認めず、歩行器歩行レベルでの移動能力は在宅復帰に向けて高い寄与率はないと考えられる結果だった。

 近藤氏は考察として、治療による侵襲や廃用によるADL低下は高齢者でより顕著に現れ、補装具や生活環境に依存しない移動手段の維持および再獲得が重要と考えられるとした。ただし、進行期や終末期にADLが低下する症例も少なくないため、介護保険など地域連携も並行して検討する必要があるとした。

 最後に近藤氏は「癌の種類によってはADL低下に直結する脳転移や骨転移、または摂食嚥下障害をきたしやすいなど、それぞれに特徴があり、対策も変わる。本研究では、すべての癌腫をまとめる形で統計解析を行っているため、今後は臓器別などに分類し、解析していく必要がある」と述べた。
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