2015年09月10日 (11:38)
がんと知って治療に専念するメリットとは?「告知してほしくない場合」はどうしたらいいの?
喉頭がんの治療のため、「声帯」を摘出し声を失った、歌手で音楽プロデューサーのつんく♂さんが、闘病の記録などをつづった手記の発売に先駆け、心境を吐露したニュースが注目されています。がんを告知されたとき、先生の「説明が頭に入らなかった」というつんくさんと、「愕然として震えていた」という妻。しかしその後の妻の尽力に驚き感謝していることなどが語られています。また最近では、川島なお美さんが「肝内胆管がん」で手術を受けましたし、著名人が自身が「がんである」ことを公表するケースは多くなっています。これはなぜなのでしょうか。昨今の「がん告知」の状況について、みてみましょう。
◆がんの告知率が上がってきている日本
ひと昔前までは、がんと言われるとすぐに死を連想してしまうため、本人には知らせずに家族だけに伝える、ということがよくありました。しかし、医学が進歩した現在、がんも症状や治療次第で治る可能性が高まり、またこうした事実が患者の間でも認知されるようになったため、がんであることをきちんと本人に伝えてから、治療に専念してもらう、というケースが徐々に増えています。
こうした背景には、患者の権利として「インフォームド・コンセント(説明と同意)」や「カルテの開示」などを重視するようになったことも影響しています。隠し事をせずに、医師と患者が互いに信頼し合って治療にあたることで、患者も「この先生に任せよう」と思え、前向きに治療に臨むことができる、ということがあげられます。
また最近では、担当医の治療法を納得して受けるために、患者や家族がほかの医師にも意見を聞く「セカンドオピニオン」を選択することも珍しくありません。現在の病状や検査結果などを担当医に提供してもらうことはもちろん、担当医の診たてをきちんと理解しないとセカンドオピニオンを受ける意味がありません。医師との信頼関係は、色々な場面で必要になってきているのです。
◆それでも十分な「配慮」が必要
現在、国立がんセンター病院では、すべてのがん患者に対し「がん告知」を行っているそうです。本病院では医療従事者に対して「告知マニュアル」を浸透させ、告知を行う際の基本的な心構えのほか、告知された患者や家族の精神面の反応や、起こりうると想定されるさまざまな問題点に留意するように呼びかけています。
なかには絶対「告知してほしくない」という人もいます。家族にそうお願いしているケースもあるでしょう。もし本人の希望が頑なで、家族の総意でもある場合は、検査の段階で医師に伝えるのもひとつの手段です。
ですが、病院側からは、もう1度家族で話し合ったり考え直すように時間をかけて説得されることがあります。なぜ告知してほしくないのか、それは、本人の意思なのか、家族の意思なのか、またその理由がとても大事です。
単に「怖い」とか「知りたくない」ということであれば、きちんと知ったうえで病気と向き合うことが回復への一番の道であり、もし末期ならば、残された時間をどのように過ごすのか考えることも大切ですよ、ということを医師からアドバイスされるでしょう。
家族がそれを聞いて気持ちが変われば、最初に誰が本人に告げるか、どのように告げるかも、医師と相談のうえ決められるでしょう。