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2015年03月06日 (10:44)

膵臓がん、新たな治療のターゲットを発見、「タンパク質リン酸化酵素D1」

膵臓の細胞を再プログラミングしてがん化させる
がん

 膵臓の細胞に再プログラミングを起こし、がん化を誘導する原因となる重要な酵素が新たに1つ特定された。「タンパク質リン酸化酵素D1」と呼ばれるこの酵素は、新たな膵臓がん治療のターゲットとなりそうだ。

 米国のメイヨー・クリニック総合がんセンターを中心とした研究グループが、オンライン科学誌のネイチャー・コミュニケーションズ誌で2015年2月20日に報告した。

がん化の仕組みを詳しく解析

 早期発見されにくく、手術でも根治が難しいとされている膵臓がん。膵臓がんはどのようにして起きるのだろうか。

 正常な細胞が、がん細胞へと運命を変える過程で「再プログラミング」という現象が起こってくる。膵臓に損傷や炎症が起きて、「腺房-導管異形成(ADM)」という変化が起きる。消化酵素を分泌する「腺房細胞」が「腺管」という管状構造に形を変えるというものだ。

 実は、膵臓の細胞の遺伝子が正常であれば、腺管は腺房細胞に再び戻れる。ところが、膵臓の細胞で「Kras」という遺伝子に突然変異が起きていると、腺房-導管異形成の後に、「膵臓上皮内腫瘍性病変(すいぞうじょうひないしゅようせいびょうへん、PanIN)」が作られて、最終的に膵臓がんとなる。

 ここで問題になる「Kras」は細胞増殖のアクセルの役割を担っている遺伝子だ。Krasに突然変異が起きた細胞は、アクセルが壊れて増殖が止まらない状態となる。細胞の表面にある「EGF-R」というタンパク質も問題になり得る。Krasのアクセルを踏む役割を持つものだからだ。EGF-Rが突然変異などで壊れても、細胞の増殖は止まらなくなる。

 ネズミを使ったこれまでの実験で、EGF-RやKrasの異常が腺房-導管異形成と膵臓上皮内腫瘍性病変という2つの変化の引き金になると証明されている。しかし、この2つの変化の前後の詳しい仕組みはよく分かっていない。

 今回研究グループは、シャーレの中で培養したネズミの膵臓細胞を使って、その仕組みの詳細な解析を試みた。さまざまな遺伝子が関係すると想定。操作した結果を観察または解析し、Krasの異常がどのような仕組みで膵臓がんにつながるのかを調べた。

新たなメンバーを特定

 結果として、Krasにより「タンパク質リン酸化酵素D1(PKD1)」という酵素が活性化され、腺房-導管異形成や膵臓上皮内腫瘍性病変を引き起こしていると新たに発見した。

 シャーレの中で、膵臓細胞のPKD1を活性化すると、およそ1週間で再プログラミングが起こり、腺房細胞は腺管に形を変えた。またPKD1の働きを邪魔すると、腺房-導管異形成と膵臓上皮内腫瘍性病変も少なくなった。

 さらに解析を進めたところ、別の仕組みも見つかった。「TGFα」というタンパク質が細胞の外からEGF-Rにくっつきやすい場合も、Krasのアクセルが踏まれると確認できた。

 また、PKD1は、「ノッチ(Notch)シグナル」という仕組みのスイッチをオンにし、細胞に「再プログラミングを起こせ」という信号を送っていた。

 まとめると、「TGFα」→「EGF-R」→「Kras」→「PKD1」→「ノッチシグナル」→「腺房-導管異形成」→「膵臓上皮内腫瘍性病変」→「がん化」という流れが分かり、今回それに関わる重要なメンバーとして、新たに「PKD1」が突き止められたというわけだ。

 今回、膵臓がんの発生の仕組みに関わっているとして新たに見つかった「PKD1」は、今後、新しいがん治療薬開発のターゲットになり得るだろうと研究グループは見ている。
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