ガン完全克服マニュアル

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2015年11月26日 (15:55)

「老親の介護をする人に、がんが多い」

■「夜3回のトイレ介助で頭が重い」

 病気のお年寄りや夫・妻を介護する人や、障がいを持つ家族の世話をする人……。

 ケアをする人(ケアラー)は、身体も心もいっぱいいっぱいです。いつ壊れてもおかしくありません。それくらい疲れ切っている人が多いのです。

 「夜3回のトイレ介助で頭が重く、寝不足がツラい。でも、見守っていないと何かあったとき、夫の兄弟に責められるのは私でしょう」

 「がんの夫を2年前からケアしています。家計が苦しく新聞配達もしています。疲れて人と会っても笑顔がでません。でも、代わってくれる人はいません」

 「介護がなければ生活がもう少し楽になるとか、そんなみにくいことを考える自分が情けなくなります」

 「テレビ、扇風機、エアコン。父は新しい家電の使い方がわからず、壊します。エアコンはリモコンの操作法がわからず電源OFFにできないため、通風口に棒を差し込みガチャガチャやってダメにしました」

 これらの声は、日本ケアラー連盟などがケアラーの介護体験を聞き取ったもの。介護のしんどさや孤独感がひしひしと伝わってきます。

 また、次のようなケアラーの実態や意識も浮かび上がっています。

----------
▼ケアをしている期間は? 
3年未満:28.1%
3年~10年未満:37.2%
10年以上:23.2%
▼身体の不調を感じている? 
はい:48.4%
いいえ:45.0%
▼「思う」(たまに+時々+よく+いつも)人の率
介護をしている人のそばにいると腹が立つ:67.7%
介護をしている人のしばにいると気が休まらない:61.1%
介護があるので家族や友人と付き合いづらい:51.5%
介護を誰かに任せてしまいたい:50.5%
出典:NPO法人 介護者サポートネットワークセンター・アラジン「全国の5つの地区の4000世帯(ケアラー2075人)を調査」
----------

 他の調査でも、「ストレスや疲労感が増した」「仕事を退職・転職した」「睡眠時間が減った」「自分の状況を理解してくれる人がいない」と感じるケアラーが多いことがわかっています。
■「がんになる人が目立つ」

 こうした“苛酷”な環境にいるからでしょうか、日本ケアラー連盟代表理事の牧野史子さんは「老親などを介護しているケアラーの方が身体を壊してしまうケースをよく見る」そうです。

 しかも、「とくに目立つのが、がん」だと牧野さんは言うのです。

 「ケアラーでがんになってしまわれる方がとても多いという印象があります。がんの発症要因のひとつはストレス。介護することで、一般の人以上に大きなストレスがかかっていることが関係しているのではないか。正式な統計はありませんが、そう感じています」

 たとえば、老親の介護をひとりでしている方が、がんで余命半年などと宣告されることは珍しくないそうです。介護に時間を取られ、健康診断やがん検診をを受ける時間がつくれなかったのかもしれません。

 親を看取るまで頑張ろうと思っていたのに、自分が先に逝けば親はどうなってしまうのか。その方の心中を察するに余りあります。牧野さんたちもがんに罹患したケアラーの方の話を聞いていると、「切なくなる」と言います。

 「こうした悲劇的な状況に陥らないためにも、そしてよりよい介護をするためにも、ケアラー自身、健康には常に気をつけておかなければならないのです」(牧野さん)

 ただでさえ肉体的に疲れているケアラーは様々な悩みを抱え込んだまま要介護者と向き合います。昼も夜も。中には、孤立し悩みが増幅され、介護うつのような症状を発症するケースも少なくありません。

 そこで、重要となるのが前回ご報告した「ケアラーズカフェ」のような同じ境遇の人が悩みを打ち明けられる場所です。そこではアドバイスを受けられますし、誰かに話を聞いてもらうことで少しは気分も晴れるかもしれません。「ツラいのは自分だけじゃないんだ」と思える効果もあります。

 ケアラーは介護の現場でケアマネージャーやホームヘルパー、訪問看護師など、その道の専門家と接することが多いです。でも、彼らは他にも多く利用者を担当しており、所定のサービスが終われば立ち去ります。なかには親切にアドバイスをしてくれる人もいますが、悩みを話せる信頼関係を築けないタイプもおり、現実的には相談相手になってもらうのは難しいわけです。

 よって、こうしたケアラーのための“駆け込み寺”を増やすことが急務なのですが、現状は全国で20カ所ほどと少ない。それも大半が週に1回とか、月に2回と開設時間は限定されており、誰もが駆け込める場にはなっていません。ほとんどのケアラーは孤立したまま放置されている、といっていいでしょう。

■介護者に絶大な人気の「手帳」

 それでも、サポートはゼロではありません。

 日本ケアラー連盟などが制作した「ケアラー手帳」がケアラーの間で話題になっています。A5版、26ページの薄い小冊子ですが、精神的に追い込まれたケアラーの気持ちを楽にする言葉や救いとなるアドバイスなどが載っているのです。

 悩み孤立し弱っているケアラーにとっては、ほんの些細な情報でも気持ちの支えになるもの。同手帳には、「1人でかかえこまないで介護仲間をつくろう」「自分をほめてあげよう」「がんばりすぎない」「健康に気をつけ自分を大切に」「(要介護者に)腹が立ってあたりまえ」といった同じ当事者目線の本音ベースの声も掲載されています。

 たとえば、「(要介護者に)腹が立ってあたりまえ」の欄には、

 「認知症の人には怒ってはいけないと言われますが、身内の介護では、そう簡単にできるものではありません。怒らないで介護できるようになるにはだれでも時間がかかります」

 とあります。

 私も父の介護経験がありますが、つい怒ってしまい自己嫌悪に陥るということを繰り返しました。もし、そのときこのアドバイスとコメントを読んでいれば、少しは気が楽になったはずです。

 介護体験事例もまとめられています。それも、ありがちな「こうしたら問題が解決した」といった美談ではなく、冒頭に紹介したような介護のあるがままのツラさを訴えるもの。だから、ケアラーの共感を呼んでいるのです。

 さらに、「気持ちが沈む日に」という欄もあって、ケアラーの気持ちをそっと癒してくれます。

 「やらなければならないことが山積みでウンザリしてしまったら、15分とか30分と決めて、気が向くまま過ごす自分の時間を作ってみては? 」

 「今日は無理せず過ごし、また明日からがんばると決めてしまうのも一手です」

 介護で疲れ果ててしまうのは、真面目でがんばり過ぎるタイプの人といわれますが、このアドバイスを読めば救われるのではないでしょうか。

 この手帳を見て「さすがケアラーが抱える問題を、よく知っているな」と私が思ったのは、ケアラー自身の健康チェックリストがついていたからです。「最近、あなた自身の健康状態について、気になることはありませんか? 」といった設問に答える形式で、「自分の身体や心をいたわる」気持ちを忘れずにすみます。病気が深刻化するのを防ぐことができるはずです。

 同手帳は1部200円。手元に一冊あると、少しは介護の悩みや孤立感を和らげてくれのではないでしょうか。日本ケアラー連盟のサイトからも購入可能です。

相沢光一=文
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