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2017年01月17日 (10:56)

遺伝子治療の発展

近年では、世界でも積極的に研究や実施が進められている遺伝子治療。1990年代に世界で遺伝子治療が始まり、当初は遺伝病が主な対象でしたが、近年ではがんの治療にも広がりつつあります。

遺伝子治療とは

 遺伝子治療は、遺伝子や遺伝子を導入した細胞を投与する治療法です。現在、生殖細胞系列への遺伝子操作は多くの国では承認されておらず、細胞や組織などの体細胞を対象とした治療に限定されています。機能が低下したり、失われた遺伝子を外から補充して治療を行います。特定の遺伝子の発現を抑え、遺伝子が細胞にダメージを与えるのを防ぐことに有効です。がんの細胞を抑えるには、細胞を直接殺す方法がよいと考えられています。

遺伝子治療の方法

遺伝子を細胞や組織に導入する方法として、ウイルスベクターを用いて行います。以前は、導入効率のよさからレトロウイルスが使われましたが、新たな変異を誘発する危険性があるという理由から、最近ではアデノウイルス、アデノ随伴ウイルスなどが使われるようになっています。さらに近年では安全上の問題から、ウイルスを使わないリポソーム法が用いられるようになりました。脂質とDNAを混ぜてその融合体を細胞に取り込ませ、直接遺伝子を注入します。このような方法は、遺伝子の導入効率が低く、効果は一時的なものであると考えられてきました。

欧米での遺伝子治療薬

 遺伝子治療は、遺伝子を運ぶベクターが改良されたことなどによって進展しました。欧米では、2012年に初めて脂肪を分解する酵素の遺伝子に異常のある遺伝病に対する薬として承認されました。現在では3種類の薬が認可されています。最近では、メラノーマなどの皮膚がんの治療にも使われるようになっています。
 日本ではまだ承認されていませんが、現在、実用化に向けた研究が進められています。最近行われた日本遺伝子細胞治療学会で、パーキンソン病や筋萎縮性側索硬化症(ALS)、食道がんなどの研究成果が報告されました。日本でも欧米の研究に続いて、ますます注目が高まっています。

 中でも注目される遺伝子治療薬の進歩は、細胞に侵入するウイルスの性質を利用して遺伝子を運ぶウイルスベクターが改良されたことです。そしてレトロウイルスをベクターに使い、リンパ球に正常な遺伝子を送り込む初期の治療の場合、治療後に白血病になるリスクが高まる結果となりました。原因を調べると、レトロウイルスで運ばれた遺伝子が、染色体のなかで、がんを起こす遺伝子の近くに入り込み、活性化させていたことがわかりました。それに対応するために、がんを起こす遺伝子を刺激しないよう、運び込む遺伝子のプロモーターと呼ばれる部分の配列に改良が加えられました。このように、これまでデメリットと考えられていた遺伝子を運ぶベクターが改善されたおかげで、より実用化に向けて前進しました。

今後の遺伝子治療

 今後、遺伝子治療のキーとなるのは、細胞組織のみに遺伝子を導入し、その発現を制御できるようにすることです。細胞としては、自己複製能をもつ幹細胞なので、直接樹立が可能なiPS細胞を用いた遺伝子治療が可能になることが今後の課題だと考えられています。多くの新しい技術も考えられてきており、今後ますます適用範囲は広がると考えられています。がん治療でも広い範囲に活用されることが期待されています。そして安全性を高めリスクを軽減することが今後の大きな課題とされています。
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