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2017年01月19日 (09:33)

がんの苦痛を和らげる緩和ケアで血液がん治療後のうつ症状をセーブ

がん治療の中で、痛みなどの症状を楽にする緩和ケアは欠かせません。血液がんの治療後の患者を対象に、緩和ケアを強化することが生活の質(QOL)やうつ症状に与える影響が検討されました。



造血幹細胞移植後の緩和ケアの効果

アメリカの研究班が、がん患者に対する緩和ケアの研究を医学誌『JAMA』に報告しました。

緩和ケアとは、病気による痛みや精神医学的苦痛などに多面的に対応して、苦痛を和らげ、生活の質(QOL)を改善する治療です。がん治療では、治療開始から終末期まで、余命を延ばすための積極的治療と同時に、適切な緩和ケアを続けることが大切です。

この研究では、血液のがんがあり、造血幹細胞移植(自家移植と同種移植を含む)を受ける患者が対象とされました。造血幹細胞移植は強力な化学療法(抗がん剤治療)とともに行われるため、抗がん剤による副作用が出やすい時期もあり、苦痛をともなう治療です。

対象者はランダムに2グループに分けられました。

緩和ケアを強化するグループでは、造血幹細胞移植のために入院する期間に、最低でも週に2回は緩和ケア担当の医師が診察をすることと決められました。緩和ケアでは一般に、社会経済的な苦痛や宗教的苦痛も重要とされますが、この研究では身体的苦痛と精神医学的苦痛を重視した緩和ケアが行われました。

比較のため標準的な治療をするグループでは、患者がそのつど求めれば緩和ケア担当の医師に診てもらえることと決められました。

効果を判定するため、2週間後に質問票を使って生活の質が調査されました。



緩和ケアでQOL・うつ改善

次の結果が得られました。


ベースラインから2週後までの報告されたQOLの低下は、対照群の患者(ベースラインの平均スコア106.83、2週後のスコア85.42、平均変化量-21.54)に比べて介入群の患者(ベースライン110.26、2週後のスコア95.46、平均変化量-14.72)のほうが小さかった(群間差-6.82、95%信頼区間-13.48から-0.16、P=0.045)。

2週間後に、両方のグループで平均して生活の質が悪化していました。しかし、緩和ケアを強化したグループのほうが、悪化の幅が小さくなっていました。

どちらのグループでもうつ症状の頻度が増えていましたが、緩和ケアを強化したグループのほうが増加量が少ないという結果でした。

不安症状も緩和ケアのグループのほうが抑えられる差が見られました。疲労症状には差は見られませんでした。



重視される緩和ケア

緩和ケアを強化することで生活の質が改善される結果が得られました。

がん治療は、生存期間を延ばすことだけが目的ではありません。世界保健機関(WHO)も全世界に向けて緩和ケアの意義を訴えています。緩和ケアが苦痛を和らげることによって、積極的治療にも前向きになれる場合もあります。緩和ケアを「治癒が望めない末期がんの治療」と受け止めるのは誤解です。

また、ここで紹介した研究では身体的苦痛と精神医学的苦痛が重視されましたが、緩和ケアにはもっと多様な面があります。家族が協力して患者を支えることも、その家族を医療従事者がサポートすることも緩和ケアの一環です。詳しくはほかのページでも解説していますので、関心のある方はあわせてご覧ください。

「緩和医療って末期がんに対して行う治療じゃないの?」

日本人の2人に1人ががんを経験すると言われる時代に、緩和ケアの意義は改めて認識されています。緩和ケアについての研究も積み重ねられ、よりよい緩和ケアが目指されています。

(大脇 幸志郎)
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