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2017年02月28日 (10:51)

がん患者の10%が発症 「転移性脳腫瘍」の最新治療事情

近年、転移性脳腫瘍の治療の選択肢が増えつつある。NTT東日本関東病院ガンマナイフセンター長の赤羽敦也医師に聞いた。

 1月末、俳優の松方弘樹さんは脳腫瘍の一種である脳リンパ腫により亡くなった。74歳だった。正確には「中枢神経系原発悪性リンパ腫」という病気で、臓器自体の病変によって引き起こされる原発性疾患だった。それに対し、「転移性脳腫瘍」は、脳以外にできたがんの遠隔転移によって起こる。がん患者の約10%が発症するといわれている。

 ただし、すべてのがんに転移性脳腫瘍のリスクがあるのではなく、がんの中でも転移性脳腫瘍を起こしやすいものがある。トップが肺がんで、ずっと数は少なくなるが、乳がんや直腸がんが続く。

 遠隔転移なので、がんのレベルとしてはステージ4に該当する。患者には絶望的な気持ちを抱く人も多い。

 しかし、赤羽医師は「転移性脳腫瘍は必ずしも『終着駅』ではない」と話す。転移性脳腫瘍の治療を受けながら10年以上生きている患者もいる。近年、大きく変わったのは、転移性脳腫瘍の状態に応じて、治療内容を選択できるようになったことだ。

■抗がん剤で劇的な効果

 転移性脳腫瘍の治療は、「手術」と「放射線」がある。手術の条件に当てはまる患者は少なく、放射線が検討される患者が大半だ。

 放射線は、がんに対して多方向から放射線を集中させ、通常の放射線より周囲の正常組織に当たる線量を減らせる「定位照射」と、脳全体に照射する「全脳照射」がある。患者の予想される余命に加え、脳腫瘍の数、大きさで選択する。

「一般的に、4個以内、3センチ以下は定位照射とされています。ところが、脳腫瘍は検査方法によって数にばらつきがある。4個までは定位照射が可能で、5個以上は不可能なのか? そこで、日本のガンマナイフ治療医たちが比較試験を行いました」

 転移性脳腫瘍の数が2~4個の群と、5~10個の群にそれぞれ定位照射を行い、その後を比較。すると、結果は同等だった。

 全脳照射は定位照射より治療期間が長く、認知機能の低下などの副作用がわかっている。一方で、全脳照射しか向かない脳腫瘍もある。そのため、どちらが優れているとは言えないが、赤羽医師は、小さめの脳腫瘍で数が10個以内であればさまざまな条件とも照らし合わせ、定位照射を選択している。

「米国の権威あるガイドラインでは、『個数で制限するのは意味がない。患者のコンディショニングで決めるべき』ともされています」

 全脳照射は一生に一度しか行えないが、定位照射なら新たに脳腫瘍が見つかった場合もそこに照射できる。日本では現状、脳腫瘍で定位照射と全脳照射のどちらを選ぶかは、担当医の裁量によるところが大きいという。

 転移性脳腫瘍の治療として、新たな光になるのではないかと期待されているのが、抗がん剤の一種「分子標的薬」だ。

「これまで、脳腫瘍には抗がん剤が効かないというのが定説でした。ところが、分子標的薬の中には劇的な効果をもたらすものがあることがわかってきたのです」

 全脳照射でないと対処できないほど複数個の脳腫瘍があった患者が、分子標的薬の投与によって、短期間ですべての脳腫瘍が消えたという報告もある。

「効かない人に分子標的薬を用いると、その間に脳腫瘍が大きくなり、治療のタイミングを逃すかもしれない。どういう患者に分子標的薬が効くのか、現在研究が行われている段階です」

 これから先、転移性脳腫瘍の治療がさらに前進することは間違いない。
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