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2017年04月14日 (15:45)

粒子線がん治療のビーム飛跡をリアルタイムで可視化、制動放射線に着目

 名古屋大学は2017年3月28日、陽子線が水中を通り過ぎる時に瞬時に発生する低エネルギー放射線(電子制動放射線)の計測によって、粒子線がん治療に用いる陽子線の飛跡をリアルタイムで見える化する方法を考案し、実証したと発表した。

 この研究は、同大学大学院医学系研究科 教授の山本誠一氏、大学院修士課程の安藤昂輝氏が、量子科学技術研究開発機構 主任研究員の山口充孝氏とプロジェクトリーダーの河地有木氏および、名古屋陽子線治療センター、早稲田大学、群馬大学と共同で行ったものだ。

 粒子線がん治療で、治療ビームの体内飛跡や到達位置を非侵襲的にその場で正確に観測できれば、治療計画通りに照射が行われたかどうかを治療中に確認できる可能性がある。飛跡に沿って発生する陽電子の分布を撮像することで粒子線の飛跡をモニタリングする方法は、現在、臨床研究の段階に到達している。しかし、陽電子が発生するまでに時間がかかるため、リアルタイムで見るのには適さないという問題があった。

 治療ビームが体内を通り過ぎるときには、電子制動放射線が瞬時に大量に発生し、エネルギーが低いため計測が容易だと考えられる。しかし、治療室内で放射線の測定を行うと、高エネルギーの放射線が元となって発生するノイズ成分が低エネルギー放射線の信号をかき消してしまうため、低エネルギー放射線の計測はこれまで注目されてこなかった。そこで、同研究グループは、高エネルギー放射線が測定されないように低エネルギー放射線の検出装置を設計することを考えた。

 同研究では、まず、水を入れた容器に139MeVの陽子ビーム(ビーム径2.4cm)を入射し、水中のビーム飛跡から放出される30~60keVの放射線をピンホールガンマカメラで測定することによって、ビームの飛跡の画像化を試みた。その結果、陽子ビームの飛跡に対応する箇所で画素値が高くなり、飛跡の見える化に成功した。また、139MeVの陽子ビームは水中で13.8cmの深さまで到達することが既に分かっているが、この到達位置に近づくにつれて直線的に画素値が減少し、到達位置以降ではほぼ一定の低い値を取った。

 さらに、計測している放射線が確かに電子制動放射線であることを、モンテカルロ・シミュレーションによる解析によって示した。現状の画素サイズは1cm程度だが、カメラを水容器に近づけるようピンホールの形状を改良することで、1mm程度まで実現するめどが立っているという。

 また、実際にがん治療に用いられているビーム強度に対しても、ビーム到達位置を見える化できることを示した。装置の実用化のためには、スリット型検出器の採用による検出効率の増加と、検出器とビームとの距離の短縮による測定効率の増加が必要だ。検出器とビームとの距離を短くするとノイズ成分が大幅に増えると予想されていたが、同研究の結果から、ビームから25cmという短距離に検出器を置いた場合でも、制動放射線をノイズ成分から分離でき、さらに、画素値が一定の低い値となる位置がビームの到達位置と一致することが明らかになった。

 今後、測定効率と位置分解能の高い既存装置の利用可能性を検討することで、粒子線がん治療の現場への広範な普及を目指すとしている。
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