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2017年04月26日 (11:00)

前立腺がんは凍らせて殺す 国内初治療を行った医師に聞く

体への負担が少ない前立腺がんの治療法が注目を集めている。国内で初めて「前立腺がん凍結療法」を行った東京慈恵会医科大学付属病院泌尿器科診療副部長の三木健太医師に聞いた。

「前立腺がん凍結療法」は文字通り前立腺がんを凍結させ、がん細胞を死滅させる。

「1年半前から始め、これまでに凍結治療を受けた6人の患者さんは全員が経過良好です」

 前立腺がんは早期に発見されれば、非常に予後がいいがんだ。

 治療法は主に「全摘手術」「放射線療法」「ホルモン療法」。全摘手術と放射線療法の治療成績は同等で、それぞれメリットとデメリットがある。

 全摘手術は前立腺をすべて取るので、摘出後、がんの状態を詳細に調べられる。治療前の検査での想定より状態が悪い場合は、それに応じた今後の治療計画を立てられる点がメリットだ。デメリットとしては、率は低いが失禁や男性機能の低下が挙げられる。

 一方、放射線療法はPSAの低下で「治癒」は確認できるものの、前立腺はそのままなので、治療が不十分であれば残ったがんが再発する可能性がある。放射線が尿道や直腸など前立腺がん以外の場所に過度に照射されれば、切迫頻尿や下血が起こる。しかし、治療直後の男性機能の低下のリスクは低い。

「一般的に、前立腺肥大などによる排尿障害など前立腺があることで不具合を感じていれば全摘手術、そうでなければ放射線療法の選択肢があると説明しています」

■従来の治療法と違って副作用がほぼない

 今回の凍結療法は「全摘手術ではなく放射線療法を選択→放射線療法でいったんPSAは下がったが、その後、徐々に上昇→種々の検査で前立腺内がんの再発が確認」された患者が対象だ。PSAとは前立腺の上皮細胞から分泌されるタンパクで、数値が高くなると前立腺がんが疑われる。

 こういった「放射線療法後の再発」の場合、従来はホルモン療法が行われてきた。しかし、ホルモンは全身に作用し、急な発汗、乳腺の痛み、体重増加、男性機能や性欲の低下、さらに糖尿病の悪化、心血管系の障害などの副作用がある。

「再発とはいえ、がんは前立腺内にとどまっているのだから、もっと低侵襲の治療法はないか。そこで始めたのが、凍結療法なのです」

 全身麻酔下で、冷やす針と温度計の機能を持つ針を前立腺がんに数本刺し、アルゴンガスを注入。細胞が死滅するマイナス20度になるまで、がんを凍らせていく。がんが氷で包まれていくイメージだ。

 直腸に入れたエコー(経直腸エコー)で、氷が的確な大きさになっているかなどを確認する。前立腺の近くの直腸と尿道が凍らないように、温度計の針で直腸の温度を確認し、尿道にカテーテルを通して温水を還流する。これらによる合併症は、これまで経験がないという。術後は、基本的にPSAで経過を見ていく。

 現段階では「放射線療法後の再発」の患者だけが対象だが、今後は変わるかもしれない。前立腺がんはごく早期の場合、特別な治療をせずにPSAで経過を観察する「監視療法」の選択肢もある。凍結療法は、監視療法の「次」の治療の一つとして期待されているのだ。

「フォーカルセラピー(部分治療)といい、すでに欧米では行われています。全摘手術や放射線に進む前に、それより低侵襲な治療法、つまり凍結療法などが検討される。日本でも今後注目されていくでしょう」

 なお、凍結療法は自費診療になり、150万円ほどかかる。凍結療法と並ぶ「放射線療法後の再発」に対する低侵襲の治療として、三木医師はヨウ素を前立腺内に挿入する「小線源療法」も行っている。小線源療法は放射線治療の一種だが、照射不十分の部位へ2度目の施術が可能。こちらは保険適用だ。

◆前立腺がんの凍結療法は、現在2泊3日の入院で行っている。「放射線療法後の再発」であっても、ホルモン療法をすでに開始している人は対象外。
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