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2017年05月02日 (15:09)

「医者は自分に抗がん剤を使わない、は嘘」急性白血病を発症した医師の証言


がんになったら、副作用を覚悟して抗がん剤を使うしかないのだろうか?  夕張をはじめとして地域医療の最前線に立ち続けてきた村上智彦医師は、2015年12月に“ 血液のがん”急性白血病を発症、新著『最強の地域医療』(ベスト新書)で154日間の闘病 体験をつづった。急性白血病という病気とその治療法とは? 

余命3ヵ月の患者になった

 白血病とは簡単に言うと血液の「がん」です(上皮性由来の「がん」を「癌」と書きますので、肉腫や白血病は「がん」と書きます)。

 血液を構成する成分には白血球、赤血球と血小板があることはご存知の方も多いと思います。これらの血球は主として骨髄という骨の中にある組織で作られています。

 白血球はさらにリンパ球と顆粒球(好中球、好酸球、好塩基球)、単球という種類があり、リンパ球ががん化するとリンパ性白血病(小児に多い白血病)と言い、それ以外ががん化すると骨髄性白血病と言います。

 私の場合、白血球の中の単球というやつが主にがん化したので「M4」という分類にあたります。骨髄の細胞の20%以上ががん細胞に占められると急性骨髄性白血病と診断されます。

 ここからの話は私自身も発症し、一番発生頻度の高い急性骨髄性白血病について書いていきます。

 統計にもよりますが、白血病の発生頻度は人口10 万人当たり2~3人で、放射線や抗がん剤等の化学物質への暴露以外のものは原因は不明です。年齢が上がるにつれて、発生頻度は高くなります。

 私の場合は職業柄、放射線に被曝する機会は一般の方よりは多かったと思いますし、被災地への支援活動もしていましたが、はっきりした原因は分かりません。

 普通のがんと違うのは、骨髄は全身にあるので必然的にがん細胞は全身に広がっていて、診断された時点でステージ4と言われる最悪の状態にあることです。

 骨髄の中ががん細胞で占拠されてしまい、正常な血液が作れなくなるので白血球、赤血球や血小板もすべて作れなくなるので、細菌や真菌、ウィルスに対する抵抗力がなくなって感染症を起こすか、出血が止まらなくなるか、貧血が進行してしまう、などの症状が現れます。人によっては増えすぎた白血病細胞(芽球と呼ばれます)が末梢血に出てきて血管を塞いでしまい、臓器障害を起こしたりします。大体放置すれば多くの場合2~3ヵ月で亡くなります。

 普通の血液検査(末梢血)に白血病細胞が出てくるようなケースは、すでに骨髄の中ではかなり芽球が増えていて、がん細胞が骨髄の外へ溢れ出てきたような状態です(貧血や血球減少で私のように骨髄検査をして発見されるケースが多いそうです)。

 他のがんとは違い、手術や放射線は使えないのでほとんど抗がん剤による化学療法しかありません(化学療法は英語でchemotherapy:ケモセラピーというので業界では略してケモと言います)。

 最近インターネットなどで「抗がん剤は効果のない毒薬で、使っても寿命を縮めるだけだ」とか「抗がん剤は製薬会社の金儲けの道具で、医師の8割は自分では使わない」とかいう書き込みが話題になっていましたが、これは嘘です。

 現に私も使いましたし、友人の医師たちも白血病や癌になった場合、よほど高齢か内臓に障害がなければ抗がん剤を使っています。

 もちろん私は医師であり薬剤師でもありますので、抗がん剤の多くは毒薬で副作用も強く、それ自体に発がん性があることも知っています。つまり本当は「副作用があるし毒性も強いので、ほとんどの医師はできれば自分には使いたくない」というほうが正しいと思います。

 放置した場合に明らかに余命が短くなるので使うしかないというのが本音ですし、今のところそれ以上に有効な科学的根拠のある治療はありません。

 薬剤師として学んだ薬の原則に「副作用のない薬はない」という言葉があります。逆にいうと全く副作用のない薬は効果がほとんどないということです。要は薬を使うことで得られる利益と不利益(副作用など)を天秤にかけ、利益を優先した場合に使うのが薬です。

 そもそも医療行為のほとんどに必ずリスクがあります。日本に多い「ゼロリスク願望」にとらわれている方は、いっそのこと医療を受けないほうが良いと思います。

(『最強の地域医療』より構成)
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文/村上 智彦
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