プロレスを通じて乳がん予防を呼び掛けるイベントが母の日の14日、一宮市真清田1の宮前三八市広場で開かれた。一宮市などのプロレスラーらでつくる新一宮プロレスが主催。10年前に母を乳がんで亡くし、自らも舌がんを経験した同プロレス代表の馬場秀樹さん(45)=一宮市奥町=は「同じ悲しみに、子どもたちが暮れないように」と集まった母親たちに検診受診を呼び掛けた。
「検診のリーフレットを子どもたちに配ってくださーい」
真清田神社前の広場に設けられた特設リング。レスラーたちの熱い戦いの合間に、馬場さんの声が響きわたった。
レスラーに目を輝かせる子どもたちにスタッフが配るのは、乳がん検診受診を勧め、ピンクリボン運動に取り組む認定NPO法人「J・POSH」(大阪市)などのリーフレットやパンフレット。「母の日にわが子から渡されれば、忙しいお母さんたちも、検診に行こうと思ってくれるのでは」(馬場さん)と四年前から続けている。
原点は、二〇〇七年一月に六十三歳の若さで亡くなった母照恵さん。乳がんで、気付いたときにはすでに転移し、医師から余命三カ月と言われた。
一宮で四十年以上、美容院を営み、「忙しくて検診には行っていなかった」。一年半闘病し、亡くなる直前まで働き続けたが、食事が取れずに徐々にやせ細り、弱っていく姿に「母の死が近づいているのに、何もできなかったのがつらかった」という。
照恵さんが亡くなった二年後、今度は馬場さんに舌がんが見つかった。幸い早期で、手術で取り除き、完治。早期発見の大切さを実感した。
がんで家族を失い、自らも経験した「サバイバー」としても、得意なプロレスを通じて情報発信できればと啓発のプロレスを発案。特に小さな子どものいる母親たちに訴え、リング脇のテーブルにも関連のさまざまな資料を並べる。
十四日は三試合があり、一宮市萩原町出身の女性レスラー235(ふみこ=本名・佐藤扶美子)さん(30)=埼玉県川口市=も男性レスラーを相手に激闘。試合前に「女性には身近な検診」と訴え、体を張った戦いぶりでPRした。
観戦した岐阜市の主婦増田真実さん(37)は長男真斗ちゃん(3つ)からパンフレットを渡され「良い機会なので、じっくり読んでみます」と話していた。
照恵さんが生前営んでいた美容院の店舗を利用し、イタリア料理店を経営する馬場さんは「観戦に訪れた人が検診を受け、一人でも多く救うことができれば、母も喜ぶ」と話している。
(山本真嗣)
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