ガン完全克服マニュアル

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2017年06月07日 (16:39)

壮絶な“がんの嵐”も…与謝野馨さんが証明した「治療で第一線」

【ドクター和のニッポン臨終図巻】

 「がん患者は働かなくていい」。心ない国会議員の発言が問題となったのと同じ週、くしくもがんと闘い続けながら40年あまり国のために働いてきた政治家が亡くなっていたことが分かりました。元衆議院議員の与謝野馨さん。78歳でした。

 自民・民主両政権で閣僚を務めたことからわかるように、波瀾万丈の政治家人生でしたが、がんとの闘いにおいては、さらに壮絶で、嵐の連続だったようです。

 最初のがんが発覚したのは1977年、39歳のとき。衆院選で初当選をしてから10カ月後、濾胞性(ろほうせい)リンパ腫という血液のがんの一種でした。悪性度はそれほど高くありませんが、再発率が高く、完治は難しいがんで余命2年と言われたそうです。

 「選挙をやる人間は弱みを見せてはいけない。だから、がんが見つかったことは家族や秘書にも言わなかった。国立がんセンターでも偽名で診察を受けていたので、健康保険が利かなかった」と後日、話しています。

 10年後、腸間膜に転移をしましたが、抗がん剤治療と化学療法を続け、なんとか克服しました。しかし2000年に直腸がんが見つかり、手術。さらに翌年には前立腺がんが発覚しました。放射線治療を長年繰り返してきたために、通常の人よりも下腹部にダメージを受けていることから、前立腺の摘出手術はせずに、ホルモン療法を半年行い、その後放射線治療によって回復に至りました。

 政治家としては1994年の初入閣後、自民党政調会長や重要閣僚を歴任。第1次安倍政権では官房長官、麻生政権では財務相を務めるなど政策通として知られましたが、06年にまたも下咽頭がんが見つかり、余命2年半という宣告を受けます。

 本来であれば、声帯ごとの摘出手術となりますが、政治家にとって命である声帯は残し、首のリンパ節と喉のがん部分だけを切除したそうです。

 12年には闘病のすべてを明かした手記『全身がん政治家』を出版。政治家は本来、選挙の不利益になるだけなので、闘病を明かさないものですが、すべてを告白しています。その後、政界引退しました。

 「与謝野さんは4つもがんを患いながら、なぜこれほど長生きできたのですか?」という質問を何人かの記者の方から、いただきました。

 がんを放置しなかったこと。そして、冷静で運が良かったこと。答えはこの2点に尽きます。もし与謝野さんが治療と仕事を放置していたら、どうなっていたと思いますか? 先の問題発言をした国会議員と、がん放置療法を勧める医師に問うてみたいものです。

 与謝野さんは、がん治療をしながら長年第一線で働けることを証明してくれました。

 ■長尾和宏(ながお・かずひろ) 医学博士。東京医大卒業後、大阪大第二内科入局。1995年、兵庫県尼崎市で長尾クリニックを開業。外来診療から在宅医療まで「人を診る」総合診療を目指す。近著「薬のやめどき」「痛くない死に方」はいずれもベストセラー。関西国際大学客員教授。
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