簡便な血液検査によって、非侵襲的に大腸(結腸直腸)癌(がん)を検出できる可能性が2つの研究で示され、ドイツ、ベルリンで開催された欧州癌学会(ECCO)・欧州臨床腫瘍学会(ESMO)共同会議で発表された。
第1の研究を率いたベルギー、OncoMethylome Sciencesオンコメチローム・サイエンス社(リエージュLiege)のJoost Louwagie博士らは、大腸癌患者193人および大腸内視鏡検査で大腸癌の認められなかった688人の血液検体を採取し、癌に関連する種々の遺伝子の検討を行った。その結果、SYNE1およびFOXE1の2つの遺伝子が、大腸癌患者には多量にみられるが、大腸癌のない人にはほとんどみられないことが判明した。
この検査の感度(癌を正しく判定できた割合)は58%、特異度(癌ではないと正しく判定できた割合)は90%で、別の集団では感度56%、特異度91%であった。早期の大腸癌患者では感度41%、特異度80%とやや低かった。この検査法は大腸内視鏡検査や便潜血検査の代わりにはならないまでも、簡便で受けやすい検査として新たな選択肢となる可能性があると、Louwagie氏は述べている。研究グループは今年(2009年)末までに7,000人を対象とする試験の実施を計画しているという。
第2の研究では、ドイツ、ECRCシャリテCharite医科大学(ベルリン)のUlrike Stein氏率いる研究チームが、結腸癌患者185人、直腸癌患者190人、胃癌患者91人のほか、腫瘍のない51人の血液を採取し、転移を促進するとされる遺伝子S100A4について調べた。その結果、S100A4のメッセンジャーRNA(mRNA)値が、癌の種類にかかわらず癌患者では有意に高かったほか、転移のない患者よりも転移のある患者の方が高値であった。さらに、後に転移がみられた患者も最初の検査の時点でS100A4値が高かったことから、転移の可能性の高い患者を早い段階で特定し、その患者に合わせた治療を実施できるようになる可能性もあると、Stein氏は述べている。
大腸癌は17人に1人が生涯に罹患するとされている。大腸内視鏡は極めて感度の高い検査法だが侵襲性が高く、便潜血検査は便検体を医師に提出する必要があることから抵抗を覚える患者もいる。血液検査はすでに多くの診察で実施されていることから、大腸癌の血液検査がスクリーニングを受ける比率の向上につながるだろうと研究グループは述べている。
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