2008年06月30日 (21:30)
注目の大腸がん新薬は“効く患者”が遺伝子検査でわかる
もし科学的に“必ず効く抗がん剤”を絞り込めれば、がん患者にとっては画期的なことである。
6月3日まで5日間行われた今年のASCO(米国臨床腫瘍学会)で注目を集めた「切除不能の転移性大腸がんの薬セツキシマブ」が、その可能性を示したのだ。慶応大学包括先端医療センターの久保田哲朗教授に分かりやすく説明してもらおう。
「セツキシマブは標準的化学療法と併用すると、生存期間が延びるなどの“薬の上乗せ効果”が立証されています。そのため日本でも今年夏に大腸がんの薬として承認される見通しです。ところが、今回のASCOで、“がん遺伝子”と呼ばれるK―RAS遺伝子が変異すると、薬の上乗せ効果がなくなることが報告され、話題になったのです」
セツキシマブはK―RAS遺伝子が変異しない患者には向くが、変異した患者には別の薬を勧めるべき、というのだ。
セツキシマブはがん細胞の増殖にかかわる上皮性増殖因子受容体(EGFR)を阻害する分子標的薬だ。転移性のがんは活動が活発でEGFRを多く発現する。セツキシマブを投与すれば転移性大腸がんの増殖は抑えられると考えられていた。
「実際は違いました。セツキシマブでEGFRをブロックしても、K―RAS遺伝子が変異すると、がん細胞を増やすよう働くK―RASタンパクが活性化して、がん細胞の増殖を促すようです」
では、セツキシマブが大腸がんの薬として正式承認された後、がん患者はどんなことに気をつければいいのか?
「ASCOの報告を受けて、日本でもセツキシマブを投与する前に、K―RAS遺伝子の変異を調べる遺伝子検査が行われる可能性があります。保険適応は未定ですが、検査会社に依頼する方法もあります。いまのところセツキシマブを使うのにK―RAS遺伝子変異の測定は条件にはなりそうもありませんが、必要な検査だと思います」
これまでも抗がん剤が効くか否かを調べる方法はあった。そのため“騒ぐことはないだろう”と思う人もいるだろうが、それは違う。
これまではがん患者から採取したがん細胞と抗がん剤を培養。がん細胞が小さくなったことだけで“効く”と結論づけていたのではないか。
いま、がん治療は科学に基づく個別化治療が力説されている。標準治療の名の下に、同じ病名なら理屈なしで薬も量も一緒なんておかしいのだ。

