2008年11月19日 (23:38)
「一貫した医師の生涯教育を」
小川氏は、新医師臨床研修制度について、「国家試験合格者が卒後研修に専念することが必須となったため、この2年間で1万5310人の新医師が誕生したものの、実質的なマンパワーになっていない。約6%の医師不足が生じたことになる」と述べた。
また、臨床研修修了者のうち大学に戻る人の割合が、新制度開始以降、5割程度になっているとのデータを示し、「臨床研修制度が帰学者の減少を招いた。特に地域医療で重要な役割を果たしていた地方大学が影響を受け、地域医療の崩壊につながった」と指摘した。
新制度の基本的な考え方についても疑問を呈し、「すべての医師にプライマリー・ケアに対応できる幅広い臨床能力を習得させるという制度発足の趣旨自体は評価できるが、国民はむしろ、各科の専門の医師に診てもらいたいというニーズを持っていると思う。いわゆる『赤ひげ先生』のような地域のプライマリー・ケア医は、国民の求める医師像とは乖離(かいり)しているのではないか」と述べた。その一方で、「各地に専門医を配置することは非現実的」として、▽一般診療ができること▽緊急時の救急処置ができること▽専門医の診断・治療が必要か否かの臨床判断ができ、専門医を適切に紹介できること▽自身も専門性を持っていること―の4点が、「理想の地域の医師像として重要では」と語った。
医学教育の在り方については、政策に一貫性が欠如していると指摘。「文部科学省の『6年間で一人前の医師に教育する』とする6年一貫医学教育と、『6年間の医学教育では不十分』とする厚生労働省の卒後臨床研修の必修化は相いれない政策だ」と述べた。
その上で、「医学教育で教えることができるのは、今の知識や技術にすぎない。『医の心』と『自らが最新の知識や技術を生涯教育として学び続けられる手法』を授けることが、医学教育の真の目的だ」として、「医師の生涯教育の観点から、卒前臨床実習、卒後の生涯医学研修を含む一貫性のある医学生涯教育システムを早急に構築する必要がある」と訴えた。
その具体的な内容として、昨年6月に全国医学部長病院長会議で出された「医学生涯教育の観点に立った医学教育改革案」を示し、▽新臨床研修制度の理念の見直し(専門研修導入期と位置付けの再編)▽研修指定病院基準・マッチング制度の見直し、地域別定数制や厳格な評価の導入▽大学院教育の医学生涯教育への組み込み―などを挙げた。また小川氏は、「臨床研修病院の協力で、6年の医学部教育で臨床研修の到達目標をクリアすることは可能。医学教育を8年から6年にすることで、限られた社会資源の有効活用ができる。社会問題化している医師不足の即効的解消につながるのでは」と述べた。
家庭医や専門医の在り方については、「日本と欧米では、医師の置かれた状況など社会基盤が違う。社会基盤の基本を抜きにした専門医・家庭医論議は無意味」と述べた。また、「最終的には、日本の医療制度の問題に帰着する」として、▽医師養成削減政策の見直し▽臨床研修制度の見直し▽医療費削減政策の見直し―を「3点セットで行うことが大切だ」と訴えた。
家庭医については、その後の議論で、定義付けの必要性が確認された。
次回の班会議は12月5日に開催の予定。


